バレエダンサーの「腰椎すべり症」
こんにちは。
やまぐちスポーツ整骨院です。
バレエダンサーのお悩みに多いのが「腰痛」です。
アラベスク、カンブレ、ポールドブラ、グラン・バットマン、ジャンプ、回転など、バレエでは上体をさまざまな方向に使います。
上体を大きく使えることで、踊りが大きくみえます。
しかし、身体を大きく伸ばしたり、反らしたり、回旋させるという動作にが繰り返されることで、腰椎に負担が集中することがあります。
腰痛といっても、原因はさまざまですが、その代表的なものの一つが「腰椎すべり症」です。
腰椎すべり症という名前を聞くと、「腰の骨がずれてしまった」「もう踊れないのでは?」と不安になる方もいるかもしれません。
しかし、すべり症があることと、必ずしも強い痛みがあることは同じではありません。
また、画像上ですべりが確認されても、症状や身体の使い方によって状態は大きく異なります。
なぜ腰椎に負担が集中しているのか。
股関節や胸椎、骨盤がどのように動いているのか。
ターンアウトやアラベスクなど、バレエ特有の動作の中でどこに代償が起きているのか。
こうした点まで考えていくことが大切です。
今回は、腰椎すべり症の基礎知識から、バレエで起こりやすい負担、セルフケアや予防について解説します。
腰痛すべり症とは

腰椎は、腰の部分にある5つの椎骨から構成されています。
通常、腰椎は積み木のように上下の骨と位置関係を保ちながら、身体を支えています。
ところが何らかの原因によって、腰椎の椎体が本来の位置から前方または後方へずれることがあります。
これが「腰椎すべり症」です。
一般的には腰椎が前方へずれる「前方すべり」が多くみられます。
ただし、「すべりがある=必ず痛い」というわけではありません。
画像検査で腰椎のすべりが見つかっていても、本人にはほとんど症状がないケースもあります。
反対に、すべりそのものだけではなく、周囲の関節、椎間板、神経、筋肉などに負担がかかることで、腰痛や脚の症状につながることもあります。
腰椎すべり症の種類
腰椎すべり症はいくつかのタイプに分類されます。
代表的なのが、
・分離すべり症
・変性すべり症
です。
分離すべり症
比較的若い年代でみられるタイプです。
腰椎の後方にある「椎弓」の一部に、疲労骨折として腰椎分離症が起こり、その結果として腰椎が前方へすべることがあります。
特に成長期にスポーツ活動を多く行う人では注意が必要です。
特にバレエでは、ジャンプやアラベスクでの腰椎伸展などによって、腰椎後方へストレスがかかることが多くなります。
そのため、成長期からバレエを続けているダンサーでは、腰痛が出た際にただの筋肉痛なのかそうでないのかを正確に判断することが重要です。
変性すべり症
加齢などによる椎間板や椎間関節の変性に伴って、腰椎の位置関係が変化するタイプです。
一般的には中高年以降に多くみられます。
ただし、バレエダンサーの場合、長年にわたって腰椎へ繰り返し負荷がかかることで、年齢だけでは説明できない腰部の変化がみられることもあります。
腰椎すべり症でみられる症状
腰椎すべり症では、症状の出方に個人差があります。
代表的なのは、
・腰痛
・腰の重だるさ
・腰を反らしたときの痛み
・長時間立っていると痛い
・運動後に腰が痛む
・お尻や脚の痛み
・しびれ
・脚の力が入りにくい
などです。
特に神経が圧迫されている場合には、腰だけではなく下肢に症状が出ることがあります。
また腰痛の原因には、他にも
・腰椎分離症
・椎間板由来の腰痛
・椎間関節由来の痛み
・筋・筋膜性腰痛
・仙腸関節周囲の問題
・腸腰筋などの筋肉の過緊張
などさまざまなものがあります。
特に若いダンサーの腰痛では、腰椎分離症などの可能性も考える必要があります。
痛みが繰り返す場合や、動作によって強い痛みが出る場合には、医療機関での評価を受けることも重要です。
腰痛すべり症がバレエで起こりやすい原因
①胸椎の可動域不足
アラベスクやカンブレなどでは、身体を大きく反らせる動きが必要になります。
このときに起こりやすいエラーが、腰椎を過伸展させてしまうことです。
胸椎に比べて、腰痛は伸展しやすい部分のため、胸椎の可動域が十分でない場合、それを腰椎で補おうとしてしまいます。
本来、股関節や胸椎なども協調して動くべきところを、腰椎だけで動きを作ってしまうことで、腰椎に過度なストレスがかかり、腰椎すべり症に繋がるケースがあります。
②骨盤の位置が悪い

骨盤はターンアウトして立ったときにも、ニュートラルなポジションを保つことがとても重要です。
しかし、後傾もしくは前傾になってしまっている方が非常に多いです。
特に、腰椎すべり症の原因となりやすいのは、骨盤が前傾している方です。
骨盤の位置がずれることで、ターンアウト自体も正確にできず、身体も安定しないため、悪循環が起こります。
③ターンアウトの代償
ターンアウトは、さまざまな動作が絡み合って作られるものであり、数日で習得できるものではありません。
しかし、足を開くことばかりに意識がいき、足首や膝を過度に捻ったり、骨盤ごと回旋させるエラーが多いです。
特に骨盤まで一緒に回してしまうと、腰椎の回旋や側屈が加わりやすくなります。
腰椎は胸椎ほど回旋に適した構造ではないため、これらを繰り返していると、腰椎すべり症のリスクが高くなります。
予防とセルフケア
①安定性を高める
腰痛予防というと、腹筋やプランクなどの体幹トレーニングを思い浮かべる方も多いでしょう。
もちろん体幹の安定性は重要です。
しかし、バレエダンサーの場合、「腰周りを筋肉でガチガチに固める」ことが必ずしも良いわけではありません。
バレエでは、身体を安定させながらも、四肢を自由に動かす必要があります。
そのため、「動かない体幹」ではなく「必要なところだけ安定させられる体幹」を目指すことが重要です。
例えば、
・体幹を安定させながら股関節を動かす練習
・片脚立位で骨盤を安定させる練習
・呼吸を止めずに体幹をコントロールする練習
こうしたトレーニングは、バレエの動きにもつながります。
②必要な部分の柔軟
セルフケアで意識したいのが、腰の負荷を減らすために、動いていない部分の柔軟性や可動域を出すことです。
腰椎は本来、身体を支えながら動くための重要な部位です。
しかし、股関節が動かなければ腰が動きます。
胸椎が動かなければ腰が動きます。
体幹をコントロールできなければ腰で支えます。
骨盤をうまくコントロールできなければ腰が代償します。
腰だけでなく身体全体を動かし、こうしたエラーを減らしていくことで、腰にかかる負担が減っていきます。
まとめ
痛みは「今の身体の使い方や負荷を見直して」というサインです。
自分の身体の状態を知り、必要なところを動かし、必要なところを安定させる。
腰椎すべり症だからといって、必ずしも踊りを辞めなければいけないというわけではなく、上手に付き合いながら、できるだけ長く、痛みなく踊り続けられる身体をつくっていきましょう。
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