男性ダンサーの「手首の痛み」
こんにちは。
やまぐちスポーツ整骨院です。
バレエでは、脚の障害が圧倒的に多いですが、男性ダンサーはパドドゥでのサポートやリフトによって、肩、肘、手首を痛めてしまうことは少なくありません。
女性がポワントで足先を酷使するように、男性は肩や手を酷使します。
どちらも職業病のようなものでしょうか。
しかし、どちらも痛みのケアをせず使い続けていけば、いつかは壊れてしまいます。
そこで本日は、男性ダンサー特有のお悩み「手首の痛み」について詳しく解説していきたいと思います。
男性ダンサーに多い手首の障害
手首の痛みの原因は、さまざまですが、まず起こりやすい障害をいくつかご紹介します。
①TFCC損傷
尺側手根三角線維軟骨複合体損傷とも呼ばれるTFCC障害ですが、男性ダンサーにとても起こりやすい障害です。
TFCCは、手首の小指側尺側を安定させるための軟部組織の集まりです。
関節円盤、靭帯、腱鞘などの複合体で、手首の安定性や支持性に加え、手首に回旋力がかかったときの力の分散、吸収などの役割を担っています。
症状
・小指側が痛い
・サポートでのズキっとした鋭い痛み
・尺屈で痛む
・手首の不安定
・手首に力が入らない
などが特徴的な症状です。
原因
手首の可動域不足や、肩甲骨周りの筋力の弱さなどは、TFCC障害の大きな原因となります。
リフトのときには、手首の十分な可動域が求められますが、これが足りないダンサーは意外と多いです。
手首の柔軟性が足りなければ、捻れのストレスが強くなってしまいます。
また、肩甲骨周りの筋力など体幹が足りない場合、女性を持ち上げたり下ろしたりといったときに、手首にかかる衝撃が大きくなります。
その他にも、女性がプロムナードでバランスを崩したり、リフトに上がるときの重心の位置が悪いなどによって、捻れや体重がかかり、痛めるケースもあります。
②腱鞘炎
こちらも多くみられる障害のひとつです。
腱鞘炎は、腱がその通り道である腱鞘で擦れて炎症がおきる障害です。
特に多いのが、手首の親指側の腱鞘炎(ドケルバン病)と、指の付け根の腱鞘炎(ばね指)です。
症状
・指がカクっと引っかかる
・手首の親指側が痛い
・手首が硬く感じる
・押すと痛い
・腫れ、熱感
酷くなると、何もしていなくてもズキズキすることがあります。
原因
サポートの際に指を使いすぎていることが多いです。
また、リフトの際に親指に力を入れすぎて親指側使いすぎていることも原因です。
連続したリフトや、高度な技術がいるサポートなどによって、手首の回内・回外が繰り返されることによって、何度も腱が擦れることによっても起きます。
さらに、前腕の弱さも腱鞘炎の大きな原因となります。
③手首の捻挫
手首は、複雑な靭帯によって支えられています。
この靭帯に急激な捻れや曲がり、荷重などが加わることによって損傷が起きます。
捻挫といっても、手首は複雑な構造のため、軽い靭帯の伸張から、微細な断裂、手根骨のズレ関節包の炎症、TFCC障害などさまざまなことが起きます。
症状
・押すと局所的に痛い
・反らす捻るなどによって痛みが出る
・荷重で痛い
・腫れ、熱感
原因
捻挫は、リフト上がりきらなかったときの持ち直しや、プロムナードでのバランスの崩れを修正したりするときに起こりやすくなります。
舞台ではアクシデントが起きることもあると思いますが、それをミスにしないため、急な動きに対応することもあるでしょう。
そういった正常ではない動きのときに捻挫は起きます。
また、疲労が溜まっているときにも注意が必要な障害です。
手首を痛めないための対策
①手首の角度を見直す
手首が反りすぎていたり、小指側に倒れていると、繰り返しの曲げが炎症に繋がります。
ニュートラルな位置で曲げられることが重要です。
また、リフトでは少し親指側に倒したり(回内)、親指を立てすぎず、面でサポートする意識で行いましょう。
②握力トレーニング
握力というと、物を握る力をイメージしますが、握力は手首の安定性や前腕の筋バランスに繋がります。
握力が弱いと、持久力がなかったり、リフト中に手首が反ってしまいます。
それによってTFCC障害や腱鞘炎のリスクが高まります。
女性側としても、握力のある男性はブレが少なく安心できます。
③テーピングをする
痛みがあるときには、テーピングをすることで痛みがましになったり、また悪化を防ぐことができます。
背屈に制限をかけるようにテーピングをすると、手首の反りすぎや回内や回外の捻れを軽減できます。
サポーターを用いるのでもよいでしょう。
④前腕ストレッチ
前腕の筋肉の硬さによって引っ張られることで痛みが出ている場合は、ストレッチをするだけで痛みが軽減することがあります。
前腕には、伸筋群と屈筋群があり、どちらかが硬いと手首が捻れて負担がかかります。
使いすぎた日は、前腕深層筋や手のひらのストレッチをしてケアをしましょう。
ただしストレッチをすると、筋出力が一時的に落ちるため、パドドゥ直前にのストレッチのしすぎには注意が必要です。
まとめ
男性ダンサーは、女性が舞台で美しく見えるよう、時には自分を犠牲にしてなにかを行うタイミングもあると思います。
また、連日のリハーサルや舞台によって休む時間がしっかり確保できないということも多いと思います。
しかし、違和感を無視してしまうと、その後のキャリアに大きな影響を及ぼしかねません。
違和感のレベルが低いうちに、適切な対策をすることが大切です。
「肩の痛み」についてはこちらで詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
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